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『オムニチャネルにおけるWEB・ITと物流』 逸見光次郎コラム(第4回)

『オムニチャネルにおけるWEB・ITと物流』 逸見光次郎コラム(第4回)

逸見光次郎コラム「オムニチャネルと物流」(全6回)

今回はオムニチャネルにおけるWEB・ITと物流の関係について掘り下げる。

WEB・ITの進化

オムニチャネルにおけるWEB・ITと物流

そもそもオムニチャネルの概念が出てきたのは、インターネットが進化しWEBサイトを通した情報検索や通信販売が活発になったからである。筆者がインターネット販売に関わり始めた1999年頃には“クリック&モルタル”つまりネットと実店舗の組み合わせが既に語られ始めていた。その中でスタートしたソフトバンクのイー・ショッピング・ブックス事業は後に株主構成を変え、セブン&アイグループのセブンネットショッピングとして今に至る。

この会社での一番の驚きは、ネットで本を探して購入した人の7割が、通販では当たり前の宅配による受取ではなく、セブンイレブン店舗での受取を選んだ事だった。顧客アンケートによれば多くが「会社の近く、自宅近く」の店舗を受取店にしており、「24時間好きな時に」「商品を受け取ってから現金で支払える」というメリットから利用しているとの事だった。特に女性は、休日朝に、人に会う支度もしていないのに宅配便業者から受け取るのを嫌がる、という事もこの時初めて知った。

その後“クリック&モルタル”が“O2O(オンライン・トゥ・オフライン)”、“オムニチャネル”、“OMO(オンライン・マージ:融合・オフライン)“と言葉は変わっていく。

95年のWindows95発売により、それまではマニアか仕事用とされていた家庭用PCが一般家庭にも普及し、専用言語を介さなくてもアイコンによる直感的操作で誰もが使えるようになった。特にインターネットは世界の様々な情報に接する事が出来、人の知識領域を格段に広げた。但し当時は従量課金制が多く1時間接続していくら、という今よりも高額な通信料金体系だった。それが2002~3年頃、ソフトバンクがADSLのモデムを街頭で無料配布する事によって普及させ、回線自体の月額利用料を相場の半値近くまで引き下げた事でインターネットの利用がさらに拡大した。ECの統計的に見ていても、この頃からネット通信販売が増え始めている。閲覧時間に制限がなくなり、ネットでゆっくり買い物をする気持ちになったからだ。並行して楽天やヤフー、Amazonによるネットモールの展開は、自社システムと自社WEBサイトを構築しなくてもネット上に出店できるという利便性のもとで拡大し、大小多くの小売企業がネット上に店を構え、成長してきた。実はこの頃までは物流面では大型店舗の在庫に頼ってEC分の在庫調達・出荷を行う企業が多かった。しかしネットモール含めECの売上規模が大きくなると、専用の倉庫が必要になり、そこから出荷する形に変わっていった。WMSと呼ばれる倉庫管理システムとECシステムの連動が必須になり始めたのだ。

オムニチャネルにおけるWEB・ITと物流

ここに拍車をかけたのがスマートフォンだ。ガラケーの頃からiモード公式などの形でショッピングメニューはあったが、実際に携帯の画面サイズに合わせたWEBサイトや操作ボタンなど、08年にiPhoneが日本で発売されて以降、端末もWEBコンテンツ側も進化し続け、筆者の感覚では2012年ごろからスマホ普及が拡大し、13~14年ごろから買い物をする人が増え始めた。まさにこの頃、ヤマト運輸はじめ宅配事業を行う各社の取扱量が急増し、送料の値上げや取引個数制限などが始まるのである。また予約販売というシステムもECと相性が良かった。今までは新製品の発売日は店頭に並ぶのが普通だったが、ネットで予約し、発売日もしくはその前日に宅配で出荷され、自宅に届く事が普通になると、コンスタントに出荷される通常のECと違い、物流に大きなピークを作り出してしまう。ネットモールのセールも同様である。特に年末商戦と重なったピークは物流を圧迫してしまう。キタムラ時代も庫内作業は、新製品発売日やネットモールセールによる出荷のピーク、その入庫作業による事前の作業増加を見込んで計画化する事ができたが、その後の宅配事業者のピークを緩和する事はできなかった。この課題は今も続いている。

ITとロジ管理

筆者は物流の専門家ではないのでWMSの歴史について語る事はできないが、ITの進化に伴い、かつECの普及によってロジ側も大きな進化を遂げてきた。前出のイー・ショッピング・ブックスは合弁に参加する各企業の役割が決まっていた。ソフトバンクはメインの出資者で事業オーナー、ヤフーはネット上からの集客を担当、セブンイレブンは店頭受取を担当、そして商品の調達と出荷・物流は書籍卸のトーハンが担っていた。

当時を振り返ると、元々の全国の書店向け取次倉庫の数万点を“基本在庫”、この事業専用の数千点を“特別在庫”と呼んでいた。前者は固定ロケーション棚ではあったが、ネット販売用に安全係数値が定められていた。例えば在庫5冊ならば2~3冊の注文まで可能、という設定である。後者は売上ベスト200の商品を中心に揃えられ、1点当たりの在庫数は10冊以上、こちらはパレット置きも含めフリーロケーションで管理されていた。こうした商品在庫管理手法を筆者は初めてこの時に学んだ。のちにAmazonでもフリーロケーションと効率の良い一筆書きのピッキングを体験したが、すでにトーハンにおいてその原型を見ていたのだ。また本来B2B事業である同社が、宅配及び店頭渡しのピッキング・梱包・出荷を行う中で、顧客に対する最終出荷ポイントとの意識を強く持ち、写真集専用の傷チェックラインや、商品に合わせた梱包形態の手法を生み出された様子は今思い出しても素晴らしいものだった。このIT技術とオペレーション技術が双方進化しながら合わさって、今のロジシステムを生み出してきたのだと思う。

また出版業界は古い業界だが、全国流通を担うため、出版社が商品見本を事前に納入し、各取次側でISBN(International Standard Book Number)という共通コードに基づいて商品マスタが生成されるフローが存在していた。そこにネット時代になって必要になった表紙画像のスキャンとマスタへの取り込みというフローが追加されて、今のような表紙画像と書籍情報を伴った商品マスタが生み出されたのである。50万SKUを超える流通商品が、IT投資ができない小規模の出版社含めて流通管理できていたのには、このマスタ整備の状況が大きかった。在庫こそ小規模出版社では社内にて目検でチェックする必要があったが、基本的な商品マスタが整備されていて、いわゆる型番商品としてネットと相性が良かった。配送時のサイズの小ささと相まって本がEC化しやすかった理由だと考える。こうしてWEB・ITの進化と、書籍・CD・文具・家電などECと相性の良い型番商品から、EC化率は上がっていったのである。

 

逸見光次郎コラム「オムニチャネルと物流」(全6回)

オムニチャネルコンサルタント
逸見 光次郎 氏プロフィール

1970年生まれ。1994年、三省堂書店入社。1999年、ソフトバンク入社。イー・ショッピング・ブックス立ち上げに参画。2006年、アマゾンジャパン入社。2007年、イオン入社。ネットスーパー事業の立ち上げと、イオングループのネット戦略構築を行う。2011年、キタムラ入社。EC推進本部副部長、ピクチャリングオンライン代表取締役会長(2012年9月にキタムラ統合)、執行役員EC事業部長、執行役員オムニチャネル(人間力EC)推進担当。2017年、個人事業主としてオムニチャネルコンサルタント活動を始める。同年、ローソン入社。マーケティング本部本部長補佐、同年退社し、コンサル契約に移行しローソン銀行立ち上げに関わる。2018年に千趣会執行役員マーケティング副本部長に就任。現在は、フリーのコンサルタントとして流通業界のオムニチャネル化のための講演活動や複数の流通事業会社のオムニチャネル化を支援中。

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