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『オムニチャネルにおける経営戦略と物流』逸見光次郎コラム(第5回)

『オムニチャネルにおける経営戦略と物流』逸見光次郎コラム(第5回)

逸見光次郎コラム「オムニチャネルと物流」(全6回)

オムニチャネルの基本は物流戦略

今回はオムニチャネルにおける経営戦略と物流の関係について掘り下げる。繰り返しお話させていただいているが、小売・流通に限らず、商品という物理的なモノがある限り、商売において物流は必須である。オムニチャネルにおいて、複数の販売チャネルを展開し、B2C/B2Bともに受注と発注を行い、モノが動くパターンを挙げてみる。

  • 拠点別在庫
    販売チャネルである店舗・EC・営業所ごとの個別在庫を持ち、販売する。その商品は自社地域倉庫/中央倉庫もしくは卸/メーカーから補充される。
  • 統合倉庫在庫
    販売チャネル統一の在庫として地域倉庫/中央倉庫から出荷する。倉庫内の在庫引当順位は受注順。その在庫は自社工場/卸/メーカーから補充される。
  • ハイブリッド型在庫
    各販売チャネルが持つ在庫①と地域倉庫/中央倉庫在庫を一元管理し、関連諸費用及び時間的に最適な出荷/補充/調達を選択して実行される

どのパターン、組み合わせかは、企業規模・業種によって、商品のサイズ・重量や利益率によって、自社生産か仕入商品かなどの要素によって変わってくる。大事な事は、どの形がその企業にとって最適なのか考えるのは物流部門ではなく経営だということだ。

各販売チャネルでは顧客に対して在庫状況を説明、納期を約束する。在庫であれば販売チャネルが持つ在庫なのか、倉庫在庫なのか、横持ち移動在庫なのかによって納期も半~1営業日違ってくる。非在庫であればメーカー在庫/工場生産状況を確認し調達可/不可の一次回答を行い、調達できるのであれば出荷日を二次回答とするが、専用物流か共同物流かによっても納期が変わってくる。

 

営業要件では顧客満足を最優先して納期の最速化が重要とされるが、経営観点ではその顧客満足と利益のバランスをとらねばならない。納期を急げば急ぐほど、個別宅配送料が発生したりコスト増があり得るからだ。販売チャネルや拠点数が増えるほど、在庫管理・商品調達・物流管理は複雑になる。オムニチャネルにおいてはその物流最適化を図る必要があり、経営における物流戦略が必須となるのだ。

しかし多くの企業では、いまだに物流はコールセンターと並んで“コストセンター”つまり仕方なく費用が発生する要素、という経営認識が強い。年初に決めた固定費予算の中でやりくりしてもらうものと考え、戦略レベルの発想になっていない。しかも経営陣に自社の物流費と売上・利益に占める割合を聞いても即答される事の方が少ない。それはコストコントロール意識も薄いという事だ。戦略もなく、コントロール意識もない経営層が多い、という事はまだまだ見直す余地が十分あるという事だ。

コストセンターからプロフィットセンターへ

物流センター

まずは物流・管理担当部署に自社業務における物流項目を確認する。倉庫は何か所あるのか、自社なのか賃貸なのか。倉庫内作業は自社なのか委託なのか、その委託契約は検品/格納/出荷個数あたりの変動費用支払いなのか、月決めの固定費用支払いなのか。運ぶトラックは自社なのか傭車なのか外部委託なのか。その費用はルート配送でトラック1台/1日いくらの固定費用なのか、運ぶ荷物の個数で決まる変動費用なのか。社内での商品移動は何を使っているのか。基本的なビジネスフローを描いて、その中における物流要素を洗い出し、予算項目として網羅されているか、固定費・変動費が正しく考えられているか一覧化して項目と金額を整理するのだ。その上で各費用を市場相場と比較してどうなのか、自社粗利に対して利益が出せる適正範囲なのかをチェックする。

物流に関する予算は固定費だけで組んではいけない。売り上げが伸びれば物流変動費は増えるのだ。何が固定費用で、何が売上に応じて変動する費用なのかをこのようにしてきちんと予算時に費目ごとに精査しておく事が重要だ。

経営戦略における物流戦略構築の重要性

こうして基本情報が揃った所で経営として次に行うのは、各部署の予算・KPI・評価との関連性を横串で確認する事だ。

販売・営業部門が売上を伸ばそうとすれば在庫が増えたり商品の移動が増えたりして物流費は増加する。一方で効率良く補充が行われると店舗は作業効率が上がりコストが最適化される。商品仕入部門や製造部門が売上を伸ばそうとすれば製品在庫や仕掛品在庫が増えて物流費は増加する。コールセンターが適切に顧客に対応するためには物流に関連するステータス管理(在庫有無、受発注状況、お届け日等)が必須だ。

IT部門は物流に関連するIT投資がどれだけ必要なのか、単年度ではなく複数年度で投資計画を知っておきたい。

物流だけで考えるのは部分最適になってしまう。これら各部署の予算・KPI・評価の数字とそれに関連する事柄も含めて、全体最適つまり経営の視点で確認し整理するのだ。その時の指標はもちろん営業利益、経常利益の最大化だ。

その為には取引先や顧客の満足度アップも忘れてはならない。取引先や顧客の継続的な満足によってこそ継続的な利益獲得が実現できるからだ。その要として物流を考え、コストをコントロールするだけではなく、最適化する思考の中で物流戦略を構築し、全社の経営戦略の一環として組み込む事がこれからの企業経営においては必須になる。ぜひとも新たな視点で自社の戦略を確認いただきたい。

次回最終回は「今後のオムニチャネルと物流」というテーマでより深く解説させていただきたい。

 

逸見光次郎コラム「オムニチャネルと物流」(全6回)

オムニチャネルコンサルタント
逸見 光次郎 氏プロフィール

1970年生まれ。1994年、三省堂書店入社。1999年、ソフトバンク入社。イー・ショッピング・ブックス立ち上げに参画。2006年、アマゾンジャパン入社。2007年、イオン入社。ネットスーパー事業の立ち上げと、イオングループのネット戦略構築を行う。2011年、キタムラ入社。EC推進本部副部長、ピクチャリングオンライン代表取締役会長(2012年9月にキタムラ統合)、執行役員EC事業部長、執行役員オムニチャネル(人間力EC)推進担当。2017年、個人事業主としてオムニチャネルコンサルタント活動を始める。同年、ローソン入社。マーケティング本部本部長補佐、同年退社し、コンサル契約に移行しローソン銀行立ち上げに関わる。2018年に千趣会執行役員マーケティング副本部長に就任。現在は、フリーのコンサルタントとして流通業界のオムニチャネル化のための講演活動や複数の流通事業会社のオムニチャネル化を支援中。

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