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小橋重信コラム『物流改善の進め方』(第4回)

小橋重信コラム『物流改善の進め方』(第4回)

小橋重信コラム「攻めの物流 守りの物流」(全6回)

これまで「攻めの物流 守りの物流」をテーマに書かせていただきました。前回は、物流だけでなくITも「攻めのITと守りのIT」があり、攻撃は最大の防御なのですが、日本企業は、物流とIT共に、守りに重点をおき、攻めきれていない事をZARAの事例を交えてお伝えしました。

今回は、これまでのサプライチェーンなど、広義の物流から、今回は少し狭義での物流について、それも物流現場における「改善」をキーワードに書かせていただきます。

物流改善が失敗する要因とは?

物流コンサルタントとして物流現場での改善依頼をいただきます。その場合は、その会社の経営層の方に呼ばれて、「自社物流をなんとかして欲しい」  「今後、事業拡大にあわせて物流を変えたい」 と言った 物流コストの削減だけでなく、現状の物流を未来に向けての変革への話をいただきます。

自分自身もコスト削減の“守りの物流”よりも、物流を戦略に“攻めの物流”を提案する方が、やりがいを感じるので、ふたつ返事でお受けするのですが、いざコンサルティングを開始するとなかなか自分の思ったように事が進められずに苦戦することが多いです。

その苦戦する要因のひとつが、経営層と物流現場との「温度差」です。
経営層の見ている物流改善と、物流現場が見ている物流改善が大きく乖離していることが多いのです。

もう少し変わりやすく言うと、経営者が見ている物流改善は、極端言い方をすると、現状を否定した「改革」です。現状の物流、これからの拡大に対応できないので、何か新しい事を取りいれて大幅な改善効果を規定しています。

そして、現場担当が見ている改善は現状の肯定で、これまでの積上げてきた運用をさらにブラッシュアップして、よりよくする「改善」です。日々の業務を遂行してきた中で、さらに良くするためにはと考え、現状を否定することは、自分達がこれまでやってきた過去の否定と捉えがちです。

目的の共有が成功のカギ

攻めのITと守りのIT

物流改善と言っても経営層と現場担当者との間で目的があっていない、もしくは共有されていない事が多いです。物流を今後にむけての目的が一致していないので、目的に到達するための目標もバラバラです。

そうなると、経営層に呼ばれて、物流に対する課題をお聞きしして、スタートするのですが、次に現場の責任者との打合せで、課題にむけて具体的な対策の前に、できない理由を全力で話してきます。
他社との違いをアピールしてきて、しまいには、「経営層は現場をわかっていない」などとの話になります。

自分が現場責任者だった経験でも、スタッフは変化することには抵抗的で、最初、何かを変えると反対されます。それでも強行して進めて、数か月後に聞くと 「もうそれなしでは考えられない。」との話になることが多いです。

これまでその業務をやってきた人からすると過去を否定された気持ちになるのでしょうか?否定しているわけではなく、このように改善した方が、現場が楽に、ミスなくできるのでと思うのですが、なかなかすんなりとは現場には受け入れてもらえないです。受け入れてもらうには、時間をかけて教育する必要があります。

・ 会社が成長するために、物流がどうあるべきか。会社の課題は何なのか。
・ その課題を解決するために、何を残して、何を変えるべきなのか。
これらを経営層も現場も一緒になって考え、目的を明確にする必要があります。
その点では、その目的が決まると、物流改善の8割はうまくいきます。

また、物流をコストだけと考え、とにかく安くしたいと考えている経営者の場合は、物流現場での改善には興味がなく、自社のビジネスにおける物流の価値を理解されていない事が多いです。そういった現場では物流への投資も消極的で、未来への準備が進んでいないです。

確かに物流コストを削減することは必要なことです。物流コストを削減することでの会社の利益における効果は高いです。なので、コスト削減そのものを目的として、物流改善を進めることは否定しませんが、その物流がお客様を喜ばせるために必要な機能だとすると、闇雲にコスト削減だけを進めていくと、お客様が離れていき、取り返しのつかないことになります。

物流の価値を見直す

「商物分離」として、商流と物流を分けて考える。物流会社は商流に関係なく、いかに安く、早く、正確にモノを運べるか?作れば売れた時代には、物流はコストセンターとして大量に処理できることが一番でした。

モノの売り方は、特にオムニチャネルを中心に、お客様が欲しいモノが、欲しい場所で、欲しい時間で入手できる。その届けることにも、お客様の満足を体現することが求められる時代には、「商物融合」として商流と物流を一緒に考える必要があると思います。テクノロジーの進化は物流そのもの複雑かつ、高度化しています。

精神論だけで人を動かしていた時代ではなく、システムやマテハンをうまく使い、効率化から省人化を進めていかなければ、労働人口が減少し、賃金が高騰する状況の中で物流は破綻してしまいます。
だからこそ、未来にむけて、自社の物流がどうあるべきか、経営者と物流現場が一緒になって考えることが重要です。

物流をコストだけで捉えている経営者は多くないでしょうか。
ITと同じく効率化だけの守りの物流として考えていませんか?自分たちの商品を、新たなサービスや価値として攻めの物流の構築を考えていますか?

 

今このブログを読まれている方で、自社の物流の事を思い出してみてください。

自社物流の強みはなんでしょうか?
ただの物を出し入れする倉庫ですか?
自社の物流の課題はなんですか?
そして、そのことは物流現場との共通の課題や目標になっていますか?

もうひとつ改善をすすめる上で重要なことが、「見える化」です。 経営層と現場が共通の目標をもって改善を実行するには、現状の課題点について数値化されていて、誰が見てのわかるようにする必要があります。

その課題点をどれだけ良くしたいのか、それを捉える現状の数字と目標とする数字する、まさにKPIを定めることが大切です。

未来にむけての物流を構築するため、経営層と物流現場が目的を共有し、その目的は数値化によって見える化ができていますか? 手遅れになるまえに、準備を進めていくことをお勧めいたします。

 

小橋重信コラム「攻めの物流 守りの物流」(全6回)

株式会社リンクス 代表取締役
小橋 重信 氏プロフィール

アパレル会社での在職中に上場から倒産までを経験、在庫が滞留することの怖さを知る。その後の物流会社にて多くの荷主の物流の導入から課題解決を進める。IT企業での実務経験も経て、ファッション業界を知り、物流会社の経験を活かした現場視点での課題解決。現在は「ファッション×IT×物流」の分野で物流コンサルとして活動中。

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