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小橋重信コラム『物流の未来』前編 (第5回)

小橋重信コラム『物流の未来』前編 (第5回)

小橋重信コラム「攻めの物流 守りの物流」(全6回)

最近は物流関連の記事をよく見るようになりました。中でもロボティクスの話は、海を隔てた海外だけの話ではなく、日本の倉庫でも増えてきています。これまで物流についての重要性について書かせていただきましたが、いよいよラスト2回です。これまで熱量の多いコラムにお付き合いいただき、ありがとうございました。物流に少しでも興味をもってもらえたらうれしいです。残り2回は、これまでの振り返りと、これから始まる未来の物流についてお伝えして、皆様の物流改革を考えるひとつのきっかけになればと思います。

これまでの振り返り

最初のコラム、「便利なだけの物流からの脱客」では、これまで荷主が、物流をコスト部門として下請け的に扱い、倉庫も荷主の要望だけに応えてきましたが、近年 物流の価値そのものが変わってきていることをお伝えしました。これからの時代は、物流はコスト部門からプロフィット部門に考え方を変えるべき時期にきています。

そして、「物流×テクノロジー」では、物流の変革に重要な要素がテクノロジーであり、特にファッション業界では店舗とEコマースをつなぐ、オムニチャネルの実現には、カートシステムなどのフロントシステムだけでなく、EC在庫と店舗在庫の一元化にはWMS(物流システム)などのバックヤードシステムが極めて重要だとお伝えしました。テクノロジーの進化は、消費者の購買行動だけでなく、物流が進化を余儀なくされています。 その事は、収益の多くを物流部門に投下しているアマゾンを見るとよくわかります。

今回コラムのテーマである「攻めの物流 守りの物流」では、日本企業は物流やITを効率改善や経費削減などの守りのツールとして捉え、攻めである企業価値を上げるために、物流やITが使われていない事について触れました。それは、アマゾンだけでなく、ファッション企業で売上No1のZARAのインディテックスの物流戦略を見ても明確です。この時代に成長している企業は、事業拡大のエンジンとして物流やITに莫大な資金を投下しています。 物流をコストと捉えた時点で勝負が決まっています。

前回の「物流改善の進め方」は、物流の重要性はわかってはいるものの、自社の物流改善がなかなか進まない、もしくは失敗する要因について、物流改善における、経営層と現場の見ている視界が違うことについて触れました。物流改善においてもっとも大切なのは、目的の共有で、自社のビジネスにおいて物流は、お客様の何を解決する手段なのか?そのために自社物流はどうあるべきなのか?コストは当然重要ですが、物流を広義に捉え、サプライチェーンとして物流の価値を見直す必要性についてお話しさせていただきました。

物流が経済を支える

物流センター

これまで振り返ってどうでしょうか?
時代とともに変わる物流の価値と重要性について触れさせていただきました。

物流はロジスティクスとも呼ばれ、ロジスティクスの語源は軍事用語 「兵站」を意味します。兵站とは戦時おける後方支援です。こんな言葉を聞いたことがありますでしょうか。「戦争のプロは兵站を語り、戦争の素人は戦略を語る」 戦争で勝利するためには、物資や人など供給ラインが極めて重要で、勝敗は兵站で決まると言っています。また、物流は心臓に例えることもがあります。生命を維持するために、心臓は極めて重要な臓器なのですが、普段生活をしている時はあまり意識することがなく、病気になって初めて大切さに気づきます。地震などの災害が発生した時に、ライフラインである物流の大切さを痛感します。なので、物流が経済を支える「心臓部」なのです。

物流の重要性は何となくわかったけど、これから自社の物流をどうすべきか?
Eコマースやオムニチャネルは、これまでの作ったものを店頭で売ると言った単純な購買行動が、チャネルを横断し、小口化や多様な受取方法含め、複雑にしています。

店頭向けのBtoB倉庫と、個人向けのBtoC倉庫の違いについては、前にも触れましたが、ひと昔前の物流と今の物流では求められることが大きく変わってきています。
作れば売れた時代は、物流は「コスト部門」として、いかに効率的にモノを消費者に届けることが重要でした。その時代の物流は倉庫の中での効率だけに注力していれば良かったです。モノが売れない時代の物流は、そもそも在庫の持ち方から、受注発注のリードタイム、在庫回転率など、サプライチェーンの一部として、どうあるべきか問われています。インディティクスのZARAは、物流費が高くなっても、高速で商品を製造・流通させることで、消化率や利益率の高い物流を実現しています。

物流生態系の変化

物流を商物分離として捉えて、コアコンピタンスである商流に集中し、物流をノンコアとして外部に切り離して考えることも、ITによってビジネスがすごいスピードで変化する現代においては、商流と物流を融合して考えた方が良いのではと思います。

ただ、これについては、物流を自社における競争領域にするか?非競争領域として共存型のプラットフォームを利用するか?難しい課題です。また、難易度が高くなる物流の課題解決には、労働者の確保も含め、省人化=ロボットなどの多額の投資も伴います。その投資額も、億単位の投資となります。ここに踏み込めるのは大手企業で、中小企業は指をくわえて、静観しているしかない・・・のでしょうか?

物流をこれまでの労働集約型産業から、マテハンやロボットなどの装置産業に変わるとも言われています。これは中小の物流会社にとっても存続の危機です。生き残りをかけた生態系の変化が、物流業界にもおこると考えています。TOYOTAがITやシェアリングによって、MaaS産業への変革を謳っているのと同様に、物流も未だかってない大変革が起ころうとしています。これについては、次回 物流の未来 後編にて解決策を書かせていただきます。今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

小橋重信コラム「攻めの物流 守りの物流」(全6回)

株式会社リンクス 代表取締役
小橋 重信 氏プロフィール

アパレル会社での在職中に上場から倒産までを経験、在庫が滞留することの怖さを知る。その後の物流会社にて多くの荷主の物流の導入から課題解決を進める。IT企業での実務経験も経て、ファッション業界を知り、物流会社の経験を活かした現場視点での課題解決。現在は「ファッション×IT×物流」の分野で物流コンサルとして活動中。

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